1. いじめ問題に対する基本的な考え方
1)いじめとは
「一定の人間関係のある者から,心理的,物理的な攻撃を受けたことにより,精神的,肉体的な苦痛を感じているもの」をいう。
2)いじめの特質とは
①いじめは,目に見えにくいもの
②いじめは,人に相談しにくいもの
③いじめは,いつでもどこでも,だれにでも起こり得るもの
④いじめの様態は,ひやかしやからかいから犯罪にあたるものまで多種多様なもの
⑤いじめられる側とそれ以外の者の認識が違っていることがあるもの
⑥いじめは複雑化・深刻化すると人の命にかかわるもの
3)いじめの種類
①ひやかし・からかい・悪口や脅し文句,嫌なことを言われる 【言葉】
②仲間はずれ,集団による無視をされる 【仲間はずし】
③軽くぶつかられたり,遊ぶふりをして叩かれたり,蹴られたりする 【軽度暴力】
④ひどくぶつかられたり,叩かれたり,蹴られたりする 【暴力】
⑤金品をたかられる 【恐喝】
⑥金品を隠されたり,盗まれたり,壊されたり,捨てられたりする 【悪戯】【盗難】【損壊】
⑦嫌なことや恥ずかしいこと,危険なことをされたり,させられたりする【脅迫】【侮辱】【強要】
⑧パソコンや携帯電話等で,誹謗中傷や嫌なことをされる 【誹謗中傷】【個人情報漏洩】【名誉毀損】
⑨その他
4)いじめに対する教職員の構え
*「いじめをさせない・見逃さない・許さない」という基本方針で
*「いじめ」を発見したら毅然とした態度で
①「未然防止」を心がけ,「早期発見」,「早期対応」,「早期解決」をめざす。
②「いじめ」の訴えには真摯に耳を傾け「いじめがあった」という前提で対応し、悪いのはいじめる側で、いじめられた側の気持ちへの寄り添いを基本とする。
*いじめであったかどうかの最終決定は解決後に改めて検証する。
③一部の問題とせず,学校全体・組織的に対応する。
2 いじめを未然に防止するために
1)「居場所」と「絆」のある学校・学級づくり
集団内で役割を担い,達成感や成就感を感じ取る経験を積ませることや温かい人間関係の中でお互いを認め合う集団づくりに取り組む。
2)「規範意識」の向上
規範意識を醸成することで「いじめは絶対許されない行為であること,卑怯で恥ずべき行為である」と認識させる。
3)「わかる授業づくり」,学習の「基礎基本の定着」
わかる授業をし,学力の基礎・基本の定着を図り,学習に対する達成感や成就感を持たせることで、生徒の心や生活を安定させる。
4)「生命」や「人権」を大切にする指導
道徳教育の充実を図る。
学校教育全体を通して「命の大切さ」を実感できる体験活動を行う。
本校教職員が人権感覚を磨き,常に自らの指導姿勢を見直す。
5)「情報活用力」・「情報モラル(善悪の判断力)」の育成
最近のいじめ問題にはネットを使ったものが急増していることから、生徒,保護者に通信や講演会,懇談会を通して,積極的に啓発していく。
3 いじめを早期発見するために
1)校内連携体制の充実【組織・体制としての状況把握】
・小さないじめのサインを見逃さないきめ細かい情報交換を行う。
・スクールカウンセラー,こども相談主事等と協力体制を維持する。(情報交換)
・全職員(事務職員等も含め)で情報を把握する。
2)共感的な人間関係の醸成【生徒から情報が入りやすい環境づくり】
・生徒の立場に立った人間味ある温かい指導を行う。
・生徒一人ひとりとのふれあいを大切にする。
・自分や仲間のよさを伝え合い,互いの存在を認め合う指導を行う。
3)アンケート調査等の効果的な実施や保護者との連携【心の状態を把握する方途】
・年間を通して計画的なアンケートを実施する。
(学校独自「いじめアンケート」を年間5回実施(5月,7月,10月,12月,2月))
・教育相談週間を設置し,生徒一人ひとりと個別の面談を実施する。
・保護者に対し、丁寧な連絡・連携を行い,協力を依頼する。
4 いじめ発見後早期に対応するために
*「確かな初動対応が決め手」であると認識し指導
*自分だけで解決できると過信しない(抱え込まない)対応
1)情報のキャッチ
・5W「いつ・どこで・だれが・何を・なぜ」1H「どのように」が時系列になるように,できるだけ複数の教員で確認する。
・双方から話を聞く時は慎重かつ注意深く進め,事実をつきあわせ,矛盾がないか整理する。
2)管理職への報告
・情報を得た職員はどのケースも緊急事態の意識をもち、情報及び,情報提供者への配慮を含めて管理職,及び関係職員への報告を確実に行う。
3)対応体制の確立
*校長(副校長・教頭・生徒指導主事)を中核に,事案に応じて柔軟な対応体制を確立する。
・管理職がいじめ対策委員会を招集する。
・管理職または対策委員会は事実関係把握までの手順・役割分担・内容を明確にする。
4)事実関係の把握
・聞き取るべき内容・留意すべき内容を確認する。
・被害者・加害者・関係者(傍観・観衆者)から個別に同時進行で事情を聞き取る。
・聞き取り中で随時情報を交換し,ズレや秘匿を減らし全体像を把握する。
5)対応方針の決定
・いつ・誰が・どのように対応するのかを決定し,迅速に実行する。
6)確かな初動対応
・被害者の安全や保護を最優先にする。
・情報が本人,保護者からの提供の場合やケガ,破損などではっきりしている場合は,即日対応する。
・即日,保護者に学校の動きを確実に伝達。可能な限り家庭訪問を実施する。(主任・担任)
5 いじめを確実に解決するために
1)被害者とその保護者に対して
*徹底して被害者の立場に立って対応
・最も信頼関係のある教職員が対応する。
・「最後まで絶対に守る」という被害者や保護者への意思表示をする。
・被害者の意向を汲み,安心して学校生活を送るための具体的なプランを提案する。
・心のケアや登下校・休み時間等の見守りを継続する。
・解決後も保護者に経過等を定期的に報告する。
2)加害者とその保護者に対して
*いじめを行った動機や気持ちにしっかり目を向けさせ十分な反省を促す。
・行為に対し,正面から向き合わせ,いじめはいかなる理由があっても許されないことだと理を尽くし冷静に説諭する。
・被害者と認識の違いがあることをふまえて対応する。
・加害者の心にも別要因でストレス負荷がかかっているケースが多いため,その点については共感的に理解し,ストレスを軽減する。
・保護者には事実と方針を伝え,協力関係を構築する。
・相手の心の痛みを理解させ,今後の行動改善を共に考える。
・解決後もしばらくは保護者に経過の定期的な報告をする。
3)観衆・傍観者に対して
*いじめは被害者と加害者だけの問題ではなく,周りの者の態度によって助長されたり,抑止されたりすることに気づかせる指導をする。
・いじめは観衆によって加速し,傍観者によって深刻化することを理解させるべく指導をする。
・全教育活動を通して,思いやりの心や正義感を育成していく。
4)PTAや保護者・地域との連携
・必要に応じていじめについて情報等を提供し,家庭や地域での様子を継続して見守ってもらえるよう連携を強化する。
・情報交流・意見交流の場を設け,一層連携を強化する。
6 校内体制(いじめ対策委員会)について
いじめ防止対策推進法:第22条
学校は,当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該の複数の教職員,心理,福祉等に関する専門的な知識を有する者その他関係者により構成される「いじめ対策委員会」を設置する。
1)校内いじめ対策委員会の設置
構成メンバー:校長・副校長・教頭・生徒指導主事・学年主任・関係担任・養護教諭・スクールカウンセラー(SC)・こども相談主事(こ相)
校長【総責任者】:①方針の明確化 ②組織の活性化 ③校内研修の充実
副校長・教頭 ④保護者面接(必要な場合) ⑤外部機関・SC・こ相との連携 ⑥マスコミ対応
生徒指導 :①情報の集約 ②指導・支援の指示 ③生徒指導(事情聴取・説諭)④保護者面接(必要に応じて)
学年主任 :①担任のフォローアップ ②生徒指導(事情聴取・説諭)③保護者対応(連絡・事情説明・家庭訪問) ④保護者面接 ⑤アフターフォロー(解決後の生活見届け・学年全体への指導)
担任等 :①いじめの早期発見・事実確認 ②管理職・対策委員会への報告 ③生徒指導(事情聴取・説諭)④保護者対応(連絡・事情説明・家庭訪問) ⑤保護者面接 ⑥アフターフォロー
養護教諭 :①生徒来室状況や会話等の情報提供 ②欠席状況の把握と情報提供
SC・こ相 :①必要に応じて被害・加害生徒へのカウンセリング ②対応等に対する助言や支援 ③生徒の状態把握と情報提供
その他必要に応じて,民生児童委員・市福祉課・こども相談センター・医療機関・警察等の参加を要請
2)委員会の役割
・本校で生じたいじめ問題への対応協議をする。
・本校におけるいじめ防止等の取り組み,保護者へのいじめ防止啓発等に携わる。
3)いじめへの対応
・いじめの事実が報告されたら,その程度に応じ、管理職が対策委員会を招集する。
・事実関係の把握,関係生徒・保護者への対応等の協議を行い,迅速に指導を開始する。
・担任,学年任せにせず,学校全体組織で対応する。
・全職員に事実を伝え,共通認識・共通行動で指導する。
4)校内研修の計画・実施
・教職員の共通認識を図るため,いじめを始めとする生徒指導上の諸問題に関する校内研修を計画・実施する。
5)取組に対する検証・見直し
・教職員による取り組みの評価,保護者への学校評価アンケートによる検証を実施する。
7 他機関との連携について(含:スクールカウンセラーやこども相談主事)
1)校内スクールカウンセラー・こども相談主事・いじめ専門相談員との連携
・いじめの未然防止・早期発見・早期対応のため,子どもたちの悩みや不安等の相談
・保護者の相談・カウンセリング
・校内対策委員会への助言と支援
・外部機関とのパイプ役
2)岡山市教育委員会との連携
・いじめの事実を確認した場合は教育委員会に連絡し連携しながら図り迅速に対応する。
・いじめが長期化している場合は経過を報告し,支援を依頼する。
3)医療機関・教育相談室・こども相談センター・市福祉課・主任児童委員との連携
・非行,育成,養護,保健,障害など児童福祉が関係してくるケースについては様々な外部機関との連携を図り,専門的な角度から総合的な判断と対応を依頼する。
・他機関と継続的に連携しながら問題解決にあたる。
4)警察署との連携
・犯罪性があるいじめについては警察と連携して対応する。
・被害者救済,二次被害防止,再発防止に努める。
8 重大事案への対処について
生命・心身又は財産に重大な被害が生じた疑いや,相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合は,次の対処を行う。
・重大事態が発生した旨を,岡山市教育委員会に速やかに報告する。
・教育委員会との協議の上,適切な専門家を加え、当該事案に対処する組織を設置する。
・上記組織を中心として,事実関係を明確にするための調査を実施する。
・上記調査結果については,いじめを受けた児童・保護者に対し,事実関係その他の必要な情報を適宜提供する。
9 個人情報等の取り扱いについて
個人調査(アンケート等)はいじめ問題が重大な事態に発展した場合等に資料として重要になることから,3年間保存する。